【黒岩メダカ】OPダンスはなぜ「虫ダンス」と呼ばれた?振り付け・カメラ演出を考察

はじめに

アニメ『黒岩メダカに私の可愛いが通じない』のOPには、一部視聴者から「虫ダンス」と呼ばれたダンスシーンがあります。

サビで5人のヒロインが腕をクネクネと動かす姿が、ひっくり返った虫が手足を動かしているように見えることから付いた呼び方でしょう。

ただ、独特に見える原因は振り付けだけではないと思っています。

腕をクネクネと動かす振り付けに、全身を映すカメラ、さらに同じ動きを繰り返す構成が重なり、「虫っぽさ」と単調さが強調されているからです。

今回は「虫に見えるからダメ」で終わらせず、振り付け・カメラ・演出の反復という3つの視点から、なぜこのダンスが独特に見えるのかを考察します。

 

『黒岩メダカ』の「虫ダンス」とは?なぜそう呼ばれた?

「虫ダンス」と呼ばれているのは、OPのサビで5人のヒロインが横に並び、腕をクネクネと動かす部分です。

特に全身が映るカットでは、腕だけではなく身体全体が細かく動いて見えるため、ひっくり返った虫が手足をバタバタと動かしている姿を連想しやすくなっています。

もちろん「虫ダンス」という呼び方は、ダンスを褒めるためにつけられたものではないでしょう。

どちらかといえば、

「動きが独特」

「なんだか変に見える」

「可愛さよりも別のものが気になる」

といった違和感を、短い言葉で表した呼び方だと思います。

ただ、個人的に面白いのは、振り付けだけを見れば「虫っぽく見える原因」のすべてを説明できないことです。

同じ動きでも、カメラの位置や映す範囲が違えば、かなり印象は変わります。

そのため、「なぜ虫に見えるのか」を考えるには、振り付けだけでなくカメラや構成まで見る必要があります。

 

そもそも『黒岩メダカ』でダンスを入れる意味とは?

今回のダンスを評価する前に、そもそもアニメでキャラクターを踊らせる意味について考えてみます。

もちろん、すべてのアニメのダンスに同じ目的があるわけではありません。

作品の勢いを表現する場合もあれば、楽曲の中毒性や楽しさを視覚的に見せるために使われる場合もあります。

たとえば『マッシュル-MASHLE-』のような作品であれば、キャラクターの可愛らしさだけでなく、作品の勢いや楽曲のノリとダンスを組み合わせることにも大きな意味があるでしょう。

一方、『黒岩メダカに私の可愛いが通じない』はラブコメ作品です。

そのため、ヒロインたちをOPで踊らせるのであれば、大きな役割のひとつはキャラクターの魅力を引き出すことにあるのではないでしょうか。

特にヒロインが複数登場する作品では、

「この子かわいいな」

「この表情が好きだな」

「このキャラクターらしいな」

と思わせるだけでも、ダンスを入れる意味は十分にあります。

もちろん、必ずしも複雑な振り付けや高度なキャラクター表現が必要なわけではありません。

重要なのは、見た人が「このキャラクターを見たい」と思える瞬間を作れるかどうかだと思います。

その基準で今回の虫ダンスを見ると、少しもったいなさを感じました。

 

問題点① 振り付けがヒロインの可愛さにつながっていない

まず気になったのが、振り付けそのものです。

虫ダンスと呼ばれている部分では、5人のヒロインがほぼ同じように腕をクネクネと動かしています。

全員で同じ振り付けをすること自体が悪いわけではありません。

アニメのダンスでは、複数のキャラクターが同じ振り付けをすることは珍しくありませんし、全員の動きが揃うことで気持ちよさが生まれる場合もあります。

問題なのは、今回の場合、「全員で同じ動きをすること」がキャラクターの魅力につながっているようにはあまり感じられなかったことです。

腕を左右に動かす動作が中心で、一人ひとりの個性が見えるわけでもありません。

そのため5人いるにもかかわらず、

「このキャラクターだから見たい」

という楽しさが少なく、誰を見ても同じ動きに見えてしまいます。

ラブコメ作品のヒロインたちを踊らせるのであれば、複雑なダンスをする必要はありません。

たとえば、

  • ハートを作る

  • 顔の近くでポーズを取る

  • ウインクをする

  • キャラクターごとに少し表情を変える

といったシンプルな見せ方でも、「かわいい」と思える瞬間は作れます。

今回の振り付けは、ダンスとして動きはあるものの、ヒロイン一人ひとりを見る楽しさにはつながりにくかったように感じました。

 

理想はキャラクターごとに少し違いを出すこと

さらに理想を言えば、それぞれの性格に合わせて振り付けや表情に違いがあると、もっと面白かったと思います。

積極的なキャラクターなら大きくポーズを取る。

恥ずかしがり屋なら、同じポーズでも少し照れた表情をする。

クールなキャラクターなら、少し控えめに踊る。

振り付けそのものを全員変える必要はありません。

同じ振り付けでも、表情やポーズの角度を少し変えるだけでキャラクター性は出せます。

もちろん、OPの数十秒ほどのダンスに、5人全員の細かな性格まで表現することを求めるのは厳しいとも思います。

それでも、ほぼ同じ動きを見せ続けるのであれば、途中で何かしらの変化は欲しかったところです。

 

問題点② カメラが「虫っぽさ」を強調してしまった

次に気になったのが、カメラの位置です。

虫ダンスの1カット目では、キャラクターの全身が見えるような構図になっています。

しかし、この部分の振り付けで大きく動いているのは主に腕です。

腰や足も多少は連動していますが、下半身そのものに「ここを見てほしい」と思える特徴的な振り付けがあるわけではありません。

その状態で全身を映したことで、腕だけをクネクネと動かしている姿がより目立ってしまいました。

さらに、身体全体が画面内に入ることで細かな揺れまで見えるため、

「ひっくり返った虫が手足を動かしているように見える」

という印象にもつながりやすくなったのではないかと思います。

もし同じ振り付けでも上半身を中心に映していれば、視線は自然と顔や腕に向かいます。

そうなれば、「虫ダンス」と呼ばれるほどの印象にはならなかった可能性があります。

実際、別のカットでは上半身を中心に映し、顔も画面の中心付近に来ています。

個人的には、こちらの方がキャラクターの表情を見やすく、ダンスとしても自然に感じました。

 

ただし、カメラを変えるだけでは解決しない

ここで重要なのは、

「ではカメラだけ直せば良かったのか?」

ということです。

個人的には、それだけでは十分ではなかったと思います。

確かに上半身だけを映せば、虫のように見える問題は軽減されたかもしれません。

しかし、腕をクネクネと振るだけの振り付けそのものが、ヒロインの可愛らしさを強く引き出しているかというと、そうは感じませんでした。

つまり、

振り付けが「ヒロインを魅力的に見せにくかった」根本的な要因で、カメラがその違和感や虫っぽさを強調した。

この2つは分けて考えた方がいいと思います。

 

問題点③ 同じ振り付けと見せ方を繰り返している

個人的に一番もったいないと思ったのが、この部分です。

虫ダンスと呼ばれているクネクネした振り付けは、一度だけではありません。

1回目のダンスが終わったあと、映像として区切りが入るのですが、その次でも再び似たような振り付けをしています。

ここがかなり気になりました。

1回目だけであれば、ここまで単調には感じなかったかもしれません。

しかし、

5人全員が同じ動き

↓

一度別カットを挟む

↓

再び5人全員が同じような動き

という流れになっているため、

「また同じ動きだ」

と感じやすくなっています。

全員で同じ振り付けをすること自体が問題なのではありません。

同じ振り付けを、繰り返していることが問題だったのではないでしょうか。

たとえば、

  • 2回目だけ振り付けを変える

  • カメラを大きく寄せる

  • 一人ずつ違うポーズを見せる

  • 表情だけ変える

といった小さな変化でも、映像としての印象はかなり違ったと思います。

 

「もう一回」のポーズは良かった

一方で、良かったと思う部分もあります。

それが「もう一回」の部分です。

ここでは5人のポーズがそれぞれ少しずつ違っています。

全員が完全に同じポーズをするのではなく、それぞれに違いがあるため、一人ずつ見る楽しさがあります。

個人的には、この方向性をもっと広げてほしかったです。

虫ダンスの部分でも、一人ひとりに完全に違う振り付けを用意する必要まではありません。

しかし、2回目だけポーズを変えたり、表情を変えたりするだけでも、もっとキャラクターの魅力を感じられたのではないでしょうか。

 

では、どんなダンスなら良かったのか?

自分は振付師ではないので、「この振り付けが正解」と具体的なダンスを提案することはできません。

ただ、今回のダンスを見ていると、ヒロイン一人ひとりの魅力を見せる方法は、ほかにもあったのではないかと思います。

たとえば、

1人ずつ表情やポーズを見せる。

↓

カメラを切り替えながら5人を順番に映す。

↓

最後に全員を映す。

といった見せ方です。

参考になるのが、『彼女、お借りします』のOPなどで見られるような、一人ワンポーズをして最後全員で合わせる、一人ずつヒロインに見せ場を作る構成です。

複数のヒロインをずっと同時に映すのではなく、それぞれに視線を向ける時間を作り、最後に全員を見せる。

『黒岩メダカ』も複数のヒロインが登場する作品なので、こうした見せ方とは相性が良かったのではないでしょうか。

重要なのは、振り付けを増やしたり難しくしたりすることではなく、「この瞬間は誰を見せたいのか」「そのキャラクターの何を魅力として見せたいのか」を映像として分かりやすくすることだと思います。

 

振り付けに合わせてカメラを決める

今回のダンスを見ていて感じたのは、振り付けとカメラは別々に考えるものではないということです。

顔の近くでポーズをするなら、上半身や顔を大きく映す。

足を使った特徴的なステップなら、全身や足元を映す。

大きく立ち位置が変わるなら、引きで全体を見せる。

つまり、

「何を見せたいのか」が先にあって、その魅力が一番伝わるようにカメラを決める

という考え方が重要なのではないでしょうか。

今回の虫ダンスでは、腕の動きが中心なのに全身を映していたことで、身体全体の細かな動きまで強調されていました。

先に「ヒロインのどこを魅力的に見せたいのか」が明確になっていれば、カメラの位置も自然と変わっていたように思います。

 

「虫ダンス」という名前自体は面白い

ここまで問題点を挙げてきましたが、個人的には「虫ダンス」という名前自体はかなり面白いと思っています。

もちろん制作側からすれば、せっかく作った映像が「虫みたい」と言われるのは嬉しいことではないでしょう。

ただ、視聴者側からすると、

「言われてみれば確かにそう見える」

と思える特徴を、短い言葉で表現しています。

ひっくり返った虫が手足をバタバタと動かしている姿。

そう言われてからダンスを見ると、

「ああ、確かに」

となる。

そういう意味では、かなり印象に残るネーミングだと思いました。

 

話題になったこと自体はプラスだったのか?

そして、この虫ダンスを評価するときに難しいのが「話題性」です。

ダンスそのものは、個人的にはあまり刺さりませんでした。

ヒロインの可愛さを見せるという点では、もっと良くできた部分があったと思います。

一方で、「虫ダンス」という名前が付き、作品やOPについて語られるきっかけになったのも事実です。

少なくとも、

「黒岩メダカのあのダンス」

として記憶に残る強さはありました。

個人的には、作品にとって厳しいのは、良くも悪くも何も話題にならず、そのまま忘れられてしまうことだと思っています。

その意味では、作品やOPを知ってもらうきっかけのひとつになったという点では、一定の価値はあったのではないでしょうか。

ただし、

「話題になった=ダンス演出として成功」

とは言えません。

話題性という軸ではプラス。

ヒロインを魅力的に見せるダンス演出として考えるなら、成功とは言いづらい。

この2つは分けて評価した方がいいと思います。

 

まとめ|可愛さは弱かったが、強烈に記憶には残った

『黒岩メダカに私の可愛いが通じない』の虫ダンスが独特に見えてしまった原因は、単純に「虫のような振り付けだったから」だけではないと思います。

個人的に大きかったと感じるのは、

  • ヒロイン全員がほぼ同じ振り付けをしている

  • 腕をクネクネと動かす振り付けが可愛さにつながりにくい

  • 腕中心の動きを全身カメラで見せている

  • 同じ振り付けと似た見せ方を繰り返している

という点です。

ヒロインの魅力につながりにくい振り付けに、カメラと反復が重なることで「虫っぽさ」と単調さが強調されたように感じました。

一方で、「もう一回」のようにキャラクターごとの違いが見える部分には、一人ずつを見る楽しさがありました。

だからこそ、虫ダンス部分にもポーズ・表情・カメラのどれか一つでも変化があれば、かなり印象は違ったのではないでしょうか。

ダンス演出としては、個人的にはあまり刺さりませんでした。

しかし、「黒岩メダカの虫ダンス」として記憶に残るほど強烈な印象を与えたのも事実です。

ヒロインの可愛さを見せる演出としては惜しかった。

しかし、良くも悪くも忘れにくいOPだった。

自分としては、そう評価したいダンスです。

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